いくらと筋子の違いを徹底解説:何の卵?旬の時期と失敗しない選び方

いくらと筋子の違いを徹底解説:何の卵で、どう違う?

いくらは「秋鮭の卵」:シロサケと時鮭の違い

いくらは、主に秋鮭(シロサケ)の卵をほぐして作られます。この事実は、いくらの品質や旬を理解する上で最も重要な基礎知識です。

秋鮭とは、産卵のために秋(主に9月〜11月)に日本の沿岸に回帰するシロサケ(白鮭)を指します。この時期のメスが抱卵している卵が、いくらの原料となります。

同じシロサケでも、夏に水揚げされる「時鮭(ときしらず)」の卵は、まだ成長段階にあるため粒が小さく、いくらの原料としては使われません。また、安価な代替品として鱒(ます)の卵を使用することもありますが、日本において一般的に「いくら」といえば、この秋鮭の卵を指します。


筋子とは?いくらになる前の状態を定義

筋子(すじこ)とは、鮭のメスが体内に持っている卵巣膜(らんそうまく)に包まれた状態の卵のことです。この卵巣膜が、卵を一房の塊として保持しています。

筋子は、この卵巣膜がついたまま塩漬けや醤油漬けに加工され、そのまま食材として流通します。卵巣膜が残っているため、いくらと比べて粒同士が密着しており、食感や味わいも異なります。

出典:Kufura(2025)「『筋子』と『イクラ』の違いって?プロ直伝『自家製イクラのしょうゆ漬け』の作り方も紹介」https://kufura.jp/life/food/601434


決定的な違いは「卵巣膜」の有無

いくらと筋子の決定的な違いは、卵巣膜の有無にあります。

 ・筋子:卵巣膜に包まれた状態の卵の塊。

 ・いくら:筋子から卵巣膜を取り除き、一粒一粒をバラバラにほぐしたもの。

つまり、いくらは筋子を原料として、人の手を加えて加工した後の姿といえます。筋子をほぐす工程を経ることで、粒が独立し、あの独特のプチプチとした食感が生まれるのです。

失敗しないいくら選び:旬の時期と品質の決定要因

北海道の旬は9月・10月:皮質のやわらかさが鍵

いくらの旬は、原料となる秋鮭の漁獲時期と密接に関係しています。秋鮭の主要な産地である北海道では、9月と10月がいくらの旬とされています。

この時期が旬とされる最大の理由は、卵の皮質(ひしつ)にあります。

 ・漁期前半(9月中旬〜10月上旬):卵がまだ成熟しきっておらず、皮質がやわらかい状態です。この時期に作られたいくらは、口の中で心地よく弾け、皮が残りにくい「とろける食感」が特徴です。

 ・漁期後半(11月以降):産卵期が近づくにつれて、卵は外部の衝撃から身を守るために皮質が固くなります。

固くなったいくらは、噛んでも弾けずに口の中で逃げてしまうことから、水産業界では「ピンポンいくら」と呼ばれ、敬遠されることがあります。この皮質の変化こそが、いくらの品質を左右する重要な要素であり、旬の時期が重要視される理由です。


産地別に見る旬の時期と漁獲量

いくらの原料となる秋鮭の漁獲量は、北海道が全国の約90%を占めています。これは、農林水産省の統計調査(令和元年)でも裏付けられており、北海道が日本のいくら文化を支える中心地であることを示しています。

しかし、いくらの旬は北海道に限らず、産地によって若干異なります。

 ・北海道:9月〜10月(最も皮質がやわらかいのは9月中旬〜10月上旬)

 ・青森県・岩手県:9月〜11月

 ・宮城県:10月〜12月(名物の「はらこ飯」など)

 ・新潟県:10月〜11月(最盛期は11月)

産地によっては冬まで漁が続くため、「いくら=秋」という認識は北海道以外の地域では当てはまらない場合もあります。購入する際は、産地とセットで旬の時期を把握することが、美味しいいくらを選ぶための基本となります。

美味しさを追求する:いくら醤油漬けの製造と購入時の注意点

生筋子からいくらを作る:北海道の食文化

北海道では、秋になるとスーパーに「生筋子」が並びます。これは、高級ないくらを家庭で手軽に楽しむための食文化の一つです。

生筋子からいくら醤油漬けを作る工程は、卵巣膜を外して洗い、調味液に漬けるという比較的シンプルなものです。味付けは家庭の好みでアレンジされますが、この手作りのいくらにおいても、原料となる筋子の鮮度と作る時期が最も重要になります。

漁期前半のやわらかい筋子を使うことで、家庭でも皮が残らない極上のいくら醤油漬けを作ることができます。

出典:食品データ館(2020)「【都道府県】サケ(鮭)の産地・漁獲量ランキング」[https://urahyoji.com/catch-sake-d/]


購入時に確認すべき「漁獲時期」の重要性

いくらは高級品であるため、購入時に失敗を避けることが重要です。特に、加工されたいくら醤油漬けなどを購入する際は、「いつ獲れた原料」であるかを確認することが、品質を見極める上での最大の注意点となります。

 ・確認ポイント:産地と漁獲時期(または製造時期)

 ・理想:北海道産であれば、皮質のやわらかい9月頃に製造されたもの。

漁獲時期が不明な場合や、漁期後半に獲れた固い卵を使用している可能性がある場合は、「ピンポンいくら」を引くリスクがあるため、購入を見合わせるという判断も必要です。旬の知識を活用し、皮質のやわらかい時期に獲れた原料で作られたいくらを選ぶことが、失敗しない購入方法の結論となります。


鱒の卵との見分け方:粒の大きさ

いくらと似た食材として、鱒(ます)の卵を使用したものが流通することがあります。これらは一般的に「鱒いくら」などと呼ばれ、秋鮭のいくらよりも安価で提供されることが多いです。

鱒の卵は、秋鮭の卵と比べて粒が小さいという特徴があります。これは、原料となる鱒がシロサケよりも小型であるためです。

いくらを購入する際、粒の大きさが不自然に小さいと感じた場合は、鱒の卵である可能性を考慮に入れることができます。しかし、日本では「いくら=秋鮭の卵」という認識が一般的であるため、品質を重視する場合は、原料が秋鮭の卵であることを確認することが推奨されます。

[1] 農林水産省(2020年) 海面漁業生産統計調査 確報 令和元年漁業・養殖業生産統計
https://www.maff.go.jp/j/tokei/kouhyou/kaimen_gyosei/

[2]農林水産省(2020年)地域経済統計 鮭(海面)の漁獲量の都道府県ランキング(令和元年)
https://www.maff.go.jp/j/tokei/kouhyou/kaimen_gyosei/

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