【海藻の種類を徹底解説】緑・褐・紅の分類基準と栄養・健康効果で選ぶ方法

海藻の分類基準と3つの種類(緑藻類、褐藻類、紅藻類)

そもそも海藻とは?陸上植物との違い

海藻は、海の中に生える藻類(そうるい)の総称です。日本近海だけでも約1,500種類もの海藻が自生していると言われています[1]。陸上の植物と異なり、海藻は胞子によって繁殖し、茎・葉・根といった明確な器官に分かれていないのが特徴です。古くは大和朝廷時代から神事の供物や租税の対象とされるなど、海藻は日本の食文化に深く根付いた伝統的な食材です[1]。

分類を分ける「生息する水深」と「色調」の秘密

海藻は、その生息する水深によって浴びる日光の量が異なり、その結果、光合成に必要な色素の種類が変化します。この色素の違いが、海藻を大きく緑藻類(りょくそうるい)褐藻類(かっそうるい)、紅藻類(こうそうるい)の3種類に分類する基準となっています。

①緑藻類の特徴と代表的な、海藻(アオノリアオサなど)

緑藻類は、3種類の中でもっとも浅い位置に生息しています。陸上の植物と同じく、光合成に必要な葉緑体(クロロフィルa、クロロフィルb)を多く含むため、鮮やかな緑色をしています。

 ・代表的な海藻:アオノリ、アオサ、カサノリなど

②褐藻類の特徴と代表的な海藻(昆布、わかめ、ひじきなど)

褐藻類は、緑藻類よりも深い位置に生息します。葉緑体のほかに、フコキサンチンと呼ばれる褐色の色素を多く含むため、赤褐色や黒っぽい色合いをしています。中には10メートルを超えるものもあり、食用海藻として最も馴染み深い種類です。


 ・代表的な海藻:昆布(こんぶ)、わかめ、ひじき、もずくなど

③紅藻類の特徴と代表的な海藻(ノリ、テングサなど)

紅藻類は、3種類の海藻の中でもっとも深い場所に生息しています。クロロフィルに加え、フィコエリスリン(赤色)やフィコシアニン(青色)といった色素を持つため、全体として紅色を帯びています。


 ・代表的な海藻:テングサ、アサクサノリ(ノリ)、フノリ、オゴノリなど

出典:豊海おさかなミュージアム (2021)「第2部そうだったのか!海藻Q&A」 https://museum.suisan-shinkou.or.jp/guide/labyrinth-of-seaweed/729/

種類別!海藻に含まれる主要な栄養成分と健康効果

海藻は、ミネラルや食物繊維を豊富に含むことが特徴で、種類によってその含有量や特有の成分が異なります。

鉄・カルシウム・ヨウ素などミネラルが豊富な海藻

海藻には、血液中のヘモグロビンの材料となる、骨や歯を丈夫に保つカルシウム、そして甲状腺ホルモンの原材料となるヨウ素などのミネラルが豊富に含まれています。特にカルシウムは、多くの海藻で牛乳よりも多く含まれており、血液凝固や筋肉の収縮をスムーズにする役割も担っています。

 ・鉄を多く含む海藻の例:ひじき、海苔、昆布、わかめなど

 ・カルシウムを多く含む海藻の例:ひじき、海苔、昆布、わかめ、あおさなど

血糖値の上昇を抑える水溶性食物繊維の働き

海藻に多く含まれるのは、水に溶けやすい水溶性食物繊維です。水溶性食物繊維は、栄養素の吸収を緩やかにすることで血糖値の急激な上昇を抑える効果が期待されています。また、腸内環境を整える役割もあり、大腸がんの抑制効果も期待されています。

 ・食物繊維を多く含む海藻の例:わかめ、ひじき、海苔、昆布など

褐藻類特有の成分「フコキサンチン」と内臓脂肪減少効果

褐藻類(わかめ、昆布など)に含まれるフコキサンチンは、内臓脂肪を減少させる効果があるとして注目されている珍しい成分です。北海道大学大学院水産科学研究院の宮下和夫教授らの研究では、フコキサンチンが白色脂肪細胞に働きかけ、余分な脂肪を燃やす作用があることが示唆されています[3]。

海藻がもたらす美容・ダイエットへの効果

海藻に含まれる水溶性食物繊維による血糖値上昇の抑制や、フコキサンチンによる内臓脂肪の減少効果は、結果として美容やダイエットにも良い影響をもたらします。また、福井県立大学の村上茂特命教授らのマウスを用いた研究では、褐藻類であるアカモクに肥満や糖尿病を抑制する作用があることが明らかにされており、生活習慣病の予防にもポジティブな効果が期待されています[4]。

出典:国立研究開発法人 国立がん研究センター (2019)「多目的コホート研究(JPHC Study」https://epi.ncc.go.jp/jphc/outcome/8395.html

海藻を食生活に取り入れる際の注意点と伝統的な知恵

過剰摂取に注意が必要なヨウ素の適正摂取量

ヨウ素は新陳代謝を促進し、子どもの成長ホルモンを活性化させるために不可欠な成分ですが、過剰摂取には注意が必要です。厚生労働省が定める「日本人の食事摂取基準(2020年版)」によると、18歳以上の男女のヨウ素の推奨量は140µg/日耐容上限量は3,000µg/日とされています[2]。特に昆布などの一部の海藻はヨウ素の含有量が非常に高いため、日常的に大量に摂取する場合は、この上限量を超えないよう注意が必要です。

日本の食文化における海藻の歴史と伝統的な加工法

海藻は、古くから日本人の食生活に欠かせない食材であり、その加工技術も発達してきました。乾燥させて保存性を高める「素干し」や「煮干し」、紙すきの技術を応用した「すき干し」など、さまざまな加工法が生まれました[1]。

 ・昆布:奈良時代には献上品とされ、江戸時代には加工品(とろろ昆布、おぼろ昆布など)が普及しました[1]。

 ・ノリ:江戸時代に養殖が始まり、紙すきの技術を応用した板状の加工法が確立しました[1]。

 ・テングサ:煮溶かして固めた「ところてん」は平安時代からあり、乾燥技術の確立により庶民の間食として普及しました[1]。

海藻の「ブルーカーボン」としての環境への貢献

海藻は、生育の過程で光合成を行い、大気中の二酸化炭素(CO2)を吸収し、海洋生態系に炭素を蓄積します。この海洋生態系に蓄積される炭素はブルーカーボンと呼ばれ、地球温暖化対策の新たな選択肢として注目されています[1]。海藻の養殖は、食料供給だけでなく、環境保全の観点からも重要な役割を担っています。

参考文献

[1] 農林水産省(2023年)にっぽん伝統食図鑑「海藻製品」
https://www.maff.go.jp/j/keikaku/syokubunka/traditional-foods/bunrui/kaisou-seihin.html

[2] 公益財団法人 健康長寿科学振興財団(2016年)健康長寿ネット「微量元素の働きと1日の摂取量(ヨウ素)」
https://www.tyojyu.or.jp/net/kenkou-tyoju/eiyouso/mineral-biryou.html

[3] 北海道大学大学院水産科学研究院(2018年)宮下和夫教授らの研究(フコキサンチンの内臓脂肪減少効果に関する研究)
http://www.asahi.com/area/hokkaido/articles/MTW20180424010490002.html

[4] 福井県立大学(2015年)海藻「アカモク」の生活習慣病予防効果を初めて検証しました
http://www.fpu.ac.jp/news/d153363.html

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